捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました

昼食のおにぎりを片手で食べていると、おもむろに社長室のドアが開き、そこには俺をジッと見つめる真っ黒の瞳があった。

端正な少し神経質にも見える龍。やたらブラックスーツが似合っていて少し苦笑しながら俺は口を開く。
「龍、いきなり悪いな」
俺が謝罪すると、冷たそうに見えるその表情が少し緩む。

「まあ、よっぽどのことだろう。俺を呼ぶなんて」

その通りだ。今もこの会社に裏切り者がいるのなら、この会社内の部署に頼むわけにはいかなかったのだ。
外部の人間かつ、信用できる人物は龍意外に思いつかなかった。
それに、あの後紗耶香のことが公にならないように、事後処理を頼んだのも龍だ。

そこに和泉さんが入って来ると、二人は見つめ合って微笑みあう。

「この龍をこんな顔に出来るなんて、君はすごいな」
俺の言葉に彼女は全く表情を変えることなく、俺達の前にお茶を置く。

「誉め言葉として受け取らせて頂きます。一時間しか調整できませんでした。人払いいたしますので」

出来る秘書でありがたい。きっと何かを察してくれているのだろう。静かに彼女が出て行くのを龍と見送った。

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