捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました

こんなこと本当にたいしたことがないのだろう。
遊びの一つにもならないと常務のきまぐれと思い、私も諦めに似た感情が広がる。

大人しくなった私に満足したのか、常務も慣れた様子で自分の服を選びだした。
いつもはスリーピースのスーツに、髪もきちんとセットされているが、試着室から出てきた常務は別人のようだった。

黒のスリムなパンツに、白のシャツにカジュアルな感じのジャケットを羽織っていた。
髪もいつもよりラフに整えられ、前髪が額にかかっていて、若く見え更に人目を引くかもしれない。
常務というよりは、どこかのモデルにでも見えそうだ。

「とても素敵です」
ハートが飛びそうな定員さんに「ありがとう」とにこやかに言うと、サラリと支払いと手続きをしてしまう。

「あの、」
そこまで言ったところで、常務が目で私の言葉を諫める。

「業務命令」
鋭い視線で言われ、私は何も言えなくなってしまう。
あっという間にホテルに荷物も運ぶ手配もしてしまい、こんな所は御曹司だと小さくため息を付く。
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