捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました
「ええ、これだけの毎月の売り上げを見込むことを考えると、かなりの質と量が必要になるでしょう。仕入れのルートと原価を各部署に提出をさせます」
少しだけ時間をかけてお茶を入れてしまった自分を叱咤しつつ部屋に戻ると、すでに二人とも真剣な表情で仕事の話をしていた。
「お願いします。あと……」
凛としたテノールの響く声は仕事用だ。それを知っている自分が嫌になる。
東和祥吾 三十五歳。大手電機メーカの二代目だが、中国や海外の進出に抑えられ少しずつ売り上げが下がる自社のてこ入れとして、飲食チェーンや、総合施設の開発を手掛けるグループ会社の東和インターナショナルの社長である。ここ数年でかなり利益を上げており、最近では若き天才そんな見出しで雑誌の表紙を飾っている。
社長としては軽薄ささえ感じるそのモデルのような容姿に、高い身長。明るいブラウンの髪に、色素の薄いブラウンの瞳。交友関係も広く、芸能人やモデルなどにも知り合いが多く、インスタグラムのフォロワー数もすごい数だ。
もはや私の頭の中から抹消していたその人が目の前で話しているのを、ここから逃げ出したい気持ちをなんとか抑え、私はパソコンに速記することだけに集中する。
きちんと仕事はしなければ。それだけを思っていると、急だったこともあり三十分ほどで終わり、私は内心ほっとする。