嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
「えっと、その怪しい者ではなくて」

 慌てて弁解を口にするものの、彼の姿をこっそりと盗み見ていたのは事実なのでやや苦しい。

「どこの誰だと聞いている」

 彼がぐいとさらに距離を詰めてきた。彼の持つオーラに圧倒されて美琴は思わずあとずさる。おまけに、なにかに足を取られて盛大にバランスを崩してしまった。

「きゃっ」

 ダメだ、転ぶ。そう思ってぎゅっと目を閉じたが、予想していたお尻への衝撃はなかった。むしろふわりと身体が浮くような感覚を覚え、美琴はおそるおそる目を開けた。

「ぎゃあ!」

 さっきよりよほど大きな声が出た。あの綺麗すぎる顔が目の前にあったからだ。どうやら彼が美琴の体を抱きとめ支えてくれたらしい。

「大丈夫か。足をひねったか?」
「いえ。おかげさまで大丈夫そうです」
「そうか」

 彼は美琴の身体からゆっくりと手を離した。不審者に対する態度とは思えぬほどに優しい手つきだった。

「ありがとうございました! 私は……」

 遅ればせながら美琴が自己紹介をしようとすると、彼がそれを遮った。

「あきづきの人間だな」
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