嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
「明日、もう一度銀行に頭を下げてくる。向こうがうんと言うまで帰らないんだから」

 美琴はそう言って勝司を励ました。そして翌日、本当に銀行の店先で土下座をして粘り続けた。

「お願いします。必ず、必ず返しますから。あきづきを助けてください!」
「秋月さん。気持ちはわかりますけど、こちらもビジネスなんです。同じように困っている方はこのご時世たくさんいます。泣き落としされたって、無理なものは無理ですよ」

 銀縁眼鏡の銀行マンは眉ひとつ動かさず冷たくそう告げた。

「他のお客様の迷惑です。もう出て行ってくださいね」

 こうして美琴は店の外に放り出された。それでも美琴は店の前の道路に膝をついて頭を下げ続けた。

「お願いします。あきづきをどうか」

 勝司のためにも自分のためにも、あきづきを守りたかった。あの店は勝司と自分の生きがいなのだ。失ったら、これから先どう生きていけばいいのかわからなくなる。

「なにをしてるんだ?」

 背中にかけられた声に美琴は振り返る。そこにいたのは、数日前に会ったばかりの御堂家のお弟子さんだった。彼の背後には見るからに高級そうな車がとまっている。おそらく車で通りかかり美琴を見つけて降りてきてくれたのだろう。
 彼はかがみこみ、美琴と視線を合わせた。

「膝から血が出てるぞ」
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