嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
「でも、気を失うことはなくなったな」

 礼は少し笑ってそう言った。初めての日、美琴は礼の腕のなかで意識を失ってしまったのだ。気がついたら朝になっていた。

「君が目覚めるまで、実は気が気じゃなかった」

 心配したのだと彼は言う。

「大丈夫です。身体が丈夫なのだけが取り柄ですから。だから、その……そんなに私に気を遣わず礼さんの好きなようにしてください!」

 最後の台詞はかなり勇気を振り絞った。でも、礼はいつも驚くほどに優しく美琴を抱くのだ。昼間のクールな彼とはまるで別人のように。
 経験値ゼロの美琴にも、彼が自分を気遣い尽くしてくれていることはよくわかる。だからこその不安もあった。礼のほうは満足できているのか、と。

 だが、美琴のその思いを礼は違う形に受け取ったらしい。少し考えこむ素振りをみせてから、彼は口を開いた。

「今のは、もう一度という誘いか?」
「え……えぇ!? ち、違いますよ!」
「なんだ、違うのか」

 礼は残念そうな声でそう言った。美琴がほっと息をつくと、おもむろに彼は身体を反転させ美琴の上に覆いかぶさった。

「な、なんですか」
「好きにしていいと言われたから、好きにすることにする」
< 37 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop