嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
「今夜と明日は実家でもいい。ただ、明後日は俺が戻るより早くここに戻っていろ」
「な、なんでですか」
「俺が早く会いたいからだ。それ以外になにがある?」

 ストレートな礼の言葉に、美琴はドギマギしてしまう。

(この人は本当に! どうして勘違いさせたがるのよ~)

 礼はいつだって無自覚・無遠慮に美琴を惑わせてくる。免疫のない美琴はいちいち反応して、ドキドキして……その度に現実を再認識して落ち込むのだ。

(わかってる。礼さんは私が彼を嫌いにならないよう優しくしてくれているだけ。きちんと約束を果たせるように)

 妊娠すること。すべてはその目的を達成するためのまやかしに過ぎない。

(わかってるのよ。でも、わかっていても)

 食事を終えた礼が席を立ち、向かいに座る美琴の後ろに回った。

「美琴」

 艶のある声で名前を呼ぶと、まだ食事中の美琴を背中からぎゅっと抱きしめた。

「やっぱり明日の夜には戻るように。俺も最終の新幹線で帰ってくる」

 美琴は黙ってうなずいた。頬が緩んでいることに気づかれたくなくて、顔は下を向いたままだ。

「美琴、どうしてこっちを見ない? こっちを向かないと悪戯するぞ」

 クスクスと楽しそうに笑いながら礼が言う。彼に呼ばれると、自分の名前が特別なものになったように感じる。どうしてなんだろう。
 美琴は真っ赤に染まった顔で礼を振り返った。
< 40 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop