嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
 美琴があきづきの店内の掃除をしている横で、勝司は帳簿をつけていた。

「御堂さんのおかげで本当に助かった。あとはあの詐欺師が捕まるのを祈るだけだな」

 礼が援助してくれた5千万のおかげで、あきづきの経営はなんとか立ち行きそうだった。勝司もすっかり元気を取り戻している。

「御堂家の仕事はどうだ? 大きなお屋敷だからなにかと大変だろう」
「あぁ、うん。大丈夫、慣れてきたし」

 勝司に仕事内容についてあれこれ聞かれたらどうしようかと思ったが、それ以上の追及はされなかった。昨夜、美琴は久しぶりに実家に泊まった。勝司は心なしか嬉しそうな顔をしていた。

「今夜には御堂家に戻るんだろう」
「うん」

 礼は最終の新幹線で帰ってくると言っていたから、美琴も戻らなくてはならない。

「なんだか嫁に出したような気分だなぁ。いや、御堂家のような立派な家に嫁に出せるなら、万々歳だが」

 美琴は思わずふきだしてしまった。

「バカなこと言わないでよ。私は借金のお礼に下働きをしてるだけ!」
「冗談だよ。あそこのお坊ちゃんはとんでもない色男だ。お前じゃ到底お眼鏡にかなわないだろう」
「当たり前でしょ。御堂家よ、御堂家!住む世界が違うんだから」

 そう、冷静に考えれば誰だってわかることだ。御堂礼の妻になれるのは、選ばれし特別な女性だけ。それは絶対に美琴ではない。


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