嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
 礼は不満そうな目でじっと美琴を見据えた。

「どうしても嫌か?」
「これだけは絶対に譲れません」
「わかった」

 礼が納得してくれたようで、美琴はほっと安堵した。

(たとえ嘘でも、私なんかを妻だと紹介したら礼さんが困るもん)

 本当に彼の子供を産めるかどうかはまだわからないけど、礼と美琴の関係はいつかは終わるものだ。その後で礼が正式に妻を迎えることだってあるだろう。そういうことまで考えたら、戸籍が綺麗ならいいで済む問題じゃないはずだ。

「では、婚約者ということにしておこう。花嫁修業もかねてうちで同居するのは、おかしな話じゃない」
「えぇ?」

 妻よりいくらかマシかもしれないが、美琴にとってはとても了承できない代案だった。だが、今度は礼も頑固だった。

「言っとくが、ここは俺も譲る気はない」
「うぅ」

 結局は美琴が折れた。今夜にでも、礼は自分の両親に婚約者ができたと話すつもりらしい。

「では、行ってくる。あぁ、そうだ」

 京都に行く礼を美琴は御堂家の門前で見送る。別れ際に礼は美琴の手を取ると、薬指をなぞった。

「どうかしたんですか?」
「京都になじみの宝飾店がある。そこで君に婚約指輪を買ってくる」
「い、要らないですよ。偽婚約なんですから」

 そんなものをもらう立場ではない。美琴はそう言ったが、礼は笑って受け流す。

「御堂の次期家元が婚約者に指輪も贈らないケチな男だなんて噂になったら困るからな。君に似合うものを探してくるよ」
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