嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
「……茶室?」

 ふたりきりになれる場所なんて意味深なことを言われたので、どこに行くのかと思っていたら礼が美琴を連れてきたのは御堂家の茶室だった。茶室は離れにあるので、たしかにふたりきりではあるけれど。

「ここは俺にとって一番大切な場所だから。それに、よく考えたら君に一度も茶を振る舞ったことがなかった」
「礼さんがお茶を点ててくれるんですか?」
「あぁ」

 礼は美琴に客人の席に座るよううながした。

「いやいや。それは恐れ多いですよ。私、作法も全然ですし」

 茶道関係のお客様は多いから作法を知らないわけではないが、まりえのようにきちんと習った人とは全然違う。美琴は断ろうとしたが、礼も譲らない。

「そういうのは気にしなくていい。俺が君に振る舞いたいんだ」

 静謐な空間に茶筅通しの音だけが心地よく響く。ぴんと背筋を伸ばして茶を点てる礼の姿は一枚の絵画のように美しい。
 凛とした空気に、美琴は頭も心もすっきりとクリアになっていく気がした。

(あぁ、茶道っていいな。いつかきちんと習ってみたいな)

「ごちそうさまでした」
「どういたしまして」
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