嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
「あの、礼さん。いつか私とこの子に茶道を教えてくれますか?」

 美琴はお腹に視線を落としながら言った。

「もちろん。いつかなんていわず、いつでも教える」

 そう言って柔らかな微笑みを返してくれた。美琴はこの笑顔を心に刻んでおこうと強く思った。決して忘れない。これから先の人生は、この笑顔を思い出しながら歩んでいくのだ。

(だって、礼さんはもう私には笑いかけてくれなくなるだろう)

 涙腺が緩みそうになるのを、美琴はなんとかこらえた。
 この決断を伝えたら、礼はきっと自分を嫌いになるだろう。茶道を教えてもらえる日なんて永遠に来ないかもしれない。でも、それでも、話さなくてはならない。

 美琴が顔をあげて礼を見ると、彼もまた真剣な目でこちらをじっと見つめていた。

「美琴。大切な話があるんだ」
「はい、礼さん。私もです」

 沈黙が流れる。先に話し出したのは礼のほうだった。

「実は少し前にあきづきに行ってきた。君のお父さんに俺から話すべきだろうと思って」

 勝司に美琴の妊娠を報告したと言うから、美琴は仰天してしまった。
< 86 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop