嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
 結婚どころか恋人を紹介したことすらなかった娘がいきなり妊娠とは、勝司も腰を抜かしたことだろう。

「お父さん、怒ってなかったですか?」

 礼もあの契約のことまでは話していないだろうから、勝司からしてみたら礼は借金の恩をきせて娘に手を出した最低な男とうつったかもしれない。

「もちろん、こっぴどく怒られた。世間知らずの坊っちゃんが……と君とまったく同じことを言われたよ」
「すみません。借金しているのに、父娘そろって態度がでかくて」

 美琴は肩をすくめた。怒り狂う勝司の姿が目に浮かぶ。

「礼さん。一生のお願いがあります」

 美琴は覚悟を決めて、礼に切り出した。

「契約違反なのは重々承知しています。借金は必ず返します。だからどうか……私がこの子と、お腹の赤ちゃんとふたりで生きていくことを許してください」

 畳に額をこすりつけるような勢いで、美琴は深く頭を下げた。礼は呆気に取られたように大きく目を瞬かせた。

「どういう意味だ? ふたりでとは……俺はいらないのか?」

 礼の瞳が切なげに揺れる。いや、美琴がそう思いたいだけだろうか。
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