嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
 美琴が実家に戻り一週間が過ぎた。

「お前なぁ、いつまでここにいるつもりだ?」

 勝司がうんざりした顔で言い放つ。

「身重の娘とかわいい孫にそんな冷たいこと言わないでよ!」
「そりゃ孫は楽しみだけど、そんな辛気臭い顔で店にいられるとなぁ。客商売なんだからよ」

 辛気臭い顔をしている自覚は美琴にはない。

「御堂の坊っちゃんとケンカでもしたのか?」

 ケンカならどれだけいいだろうか。仲直りできるような関係なら、幸せなのに。

「ケンカとかじゃなくて……お父さんには申し訳ないけど、シングルマザーとして頑張る予定だから。お父さんもこの子のパパ代わりとして長生きしてね」

 美琴はできるだけ明るくそう言ったが、勝司は渋い顔だ。

「なにがあったのか知らねぇが、きちんと話をしてこいよ。あのお坊ちゃんはそんなに器の小さい男じゃないだろ」

 美琴は勝司の言葉に少し驚いた。さぞかし礼に腹を立てているだろうと思っていたからだ。

「いや、まぁな。元々、俺は京都の家元と奥様は人格者で尊敬してるがあの坊っちゃんはどっか冷たい感じがして好きじゃなかった。けどな」

 勝司は言葉を続けた。

「お前の話をするときの顔を見たら、そんな悪いやつじゃないんだなってわかったよ。それに、白無垢選びにバカみたいに真剣になっててなぁ。あの坊っちゃんはお前に心底惚れ込んでるよ」
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