嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
「白無垢? なんの話?」

 美琴は勝司に詰め寄った。勝司によると、礼があきづきを尋ねてきたのは白無垢を購入するためだったらしい。

「お前に一番似合うものを選びたいって、何度も何度も足を運んで悩んでたぞ。やっといいのが見つかったのに、なんちゅうタイミングでケンカしてんだ」

(白無垢なんて……そんな話、知らなかった)

 美琴が混乱していると、勝司が一枚のハガキを美琴の顔の前でヒラヒラさせた。達筆な文字で書かれた差出人を見て、美琴は大きな声をあげた。

「これって」
「お坊ちゃんからお前に手紙だ」

 美琴は勝司の手からそれをひったくるようにして奪うと、自分の部屋へと駆けこんだ。

【美琴へ

君からもらった手紙は十二枚もあるのに、俺が書くのは初めてで少し緊張している。
ひとつだけ頼みがある。来月の茶会に君とお腹の子にもぜひ来てほしい。俺は君に伝えなくてはいけないことがあるんだ。 御堂礼】

 ハガキにはそう綴られていた。そして、伽羅の香がふわりと美琴の鼻をくすぐった。

「同じ香り……」

 それは礼からのメッセージのように思えた。美琴はハガキを胸に抱きしめ、つぶやいた。

「私も。一番大切なこと、まだ伝えてなかった」

 一緒に暮らせなくてもいい。妻にはなれなくても構わない。でも、秋月美琴が御堂礼を好きになったこと。これから先もずっとずっと愛し続けること。それだけは彼に知っていてもらいたい。

 

 


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