消えない傷・消えない痛み

**凛


父の研究室に
父が忘れたお弁当を届けると

父に必死に食らいついている
女の子がいた。

珍しいと、思ったのが
始まりだが·····

彼女は、綺麗で頭も切れて
とても優しい子で
私達は、すぐに友達になった。

それに、父が可愛がっているのが
すぐにわかった。

彼女の卒業が近づくと
やはり、父が彼女を引っ張り
彼女・美桜は、
父の研究室で働く事となった。

学生の時は、生き生きしていた美桜。

卒業して働き始めてから
考え事をしたり、携帯を見ている事が
増えて行った。

一年、二年と過ぎ
携帯を見て泣きそうにしている
美桜を
私も父も心配していた。

何度も、そんな男止めな
と、言った。

LINEを返すだけに
何秒もかからない。
回りに人がいるなら
トイレにでも行けばよい。
トイレに行く暇や食事をする暇もない
なんてことは、人としてありえない。

それすら、やらないと
言うことは·····
自ずと·····わかる·······

三年も過ぎ既読にもならず
帰国の知らせもない。

美桜も27歳
女の人生で待つには長い。

私にも今は、彼はいないが
必要ないからと
私は思っているが。

何度も泣き
何度も苦しみ
だが、まだ、美桜は
彼を忘れていない
忘れようとしているが·····

だが、今日は
携帯を見てニコニコしている。
友人だと言う男の子から
LINEが来て····
返信があって····

そんな些細な事に
この子は、こんな顔をする

彼氏だった子は
こんなに、なっている
美桜を知らないだろう

医者が、どんだけ
偉いのか知らないが
人の気持ちもわからないような
奴は、くずだ。

美桜には、幸せになって欲しい。

暖君の話をきいて
美桜の気持ちが動くと良いが。
< 10 / 83 >

この作品をシェア

pagetop