消えない傷・消えない痛み

**帰国の準備


火葬場で、美桜が倒れてから
アメリカに帰れずにいた。

俺を捨てた女だ
と、何度も、何度も思ったが
体が、言うことを聞いてくれない。

マリーナには、先に帰るように
伝えた。

なんか、騒いでいたが
俺の態度で、何か感じるものが
あったのだろう。

美桜が救急車で運ばれて
潤天堂大学病院の高木先生から
連絡をもらった。

高木先生が潤天堂大学病院の
同期に訊ねてくれたようだ。

だから、美桜が目をさましたと
連絡をくれた。

暖から何か聞いているかも
知れないが····
高木先生は、余計な事は
何も言わなかった。

美桜が目をさましたと聞いて
病室に向かったが

寝たら、暖がいなくなっているかも
と、思って眠れなかった
と、話す美桜の声が聞こえて·····

胸が苦しくてたまらなかった。

一目顔を見て·····とか
思ってもいないのに
その場から離れられなかった。

すると、
美桜に触らないで
と、俺に怒鳴った人がでてきた。

あの時のあの人の顔は
憎しみでいっぱいだった。
なぜ、俺に?と思ったが·····

俺を見つけると
びっくりした顔をして
「ずっと?」
と、訊ねられたから
ずっと気にしていたのか?
ずっと日本にいたのか?
と、言われたのかわからずに
小さく頷いた。

その女性は、目を大きく開いて
俺を見て
美桜のお父さん達が来るからと
言われて、一緒に病院をでた。

俺は、外で
アメリカに明日、帰る事と
美桜を御願いします。と
伝えたから、その女性の元を離れた。

女性は、何か、言いかけたが
女性は、再び口を開かなかった。


翌日アメリカに戻り
教授や病院長と日本への
帰国の話をした。

ありがたいことに
残って欲しいと言って貰えたが
そもそも三年の予定が
大幅に延びている事もあり
手術予定が入っている患者さんで
伊織が執刀しないと行けない患者さんを
伊織が行いう事で調整に入った。

マリーナともその日に会い
日本へ帰国することを伝えた。

マリーナは、結婚を申し込まれる
と、思っていたようで
泣いていたが·····

俺は、誰とも結婚する気持ちは
なかった。

女は、簡単に裏切る
そう、思っていたから······

思っている筈なのに······

なぜ、裏切り、捨てられた
女が気になるのか
俺は····わからなかった。

だが、マリーナには
お世話になったのは事実だ。

❬マリーナには、感謝している。
だが、俺は、誰とも結婚する
気持ちはない。
マリーナなら、俺なんかと
違ってマリーナを大切にしてくれる
人が表れる。❭
と、伝えた。

それでも·····

❬いおりを愛してるの❭
と、言ってくれたが
その言葉にも俺の心は響く事はなかった。

それからは、患者さんの為に
動いて、日本へと帰国した。

アメリカに戻ってから
三ヶ月が過ぎていた。
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