寄り添う花のように私はあなたの側にいたい
と言う事は、私が何年も子供を産まなかったら、怪しく思うどころか、屋敷を追い出されるかも。

「あの……ここだけの話なんですけど。」

「はい。」

徳次郎さんは戸を閉めて、再び私の前に来てくれた。

「私と保さんは、実は何にもないんです。」

「何もない?まだ昨日来たばかりではないですか。今夜あたり、きっとお召しになりますよ。」

「その……結婚を回避する為の、お飾りだと言われているの。」

すると徳次郎さんは、私の耳元にそっと囁いた。

「そこを何とかして、子供を産むのが、あなたの勤めです。」

「えっ……」

「頼みましたよ。」

徳次郎さんは、私の肩をポンと叩くと、部屋を出て行った。


そこを何とかするって、どうしたらいいの?

顔が火を噴いたように、熱くなる。

何も知らないのに、保さんを誘惑するなんて、できないよ。


私は、そっと部屋を出た。

誰か、聞ける人っていないかしら。

すると女中の1人が、廊下を歩いていた。

「すみません。ちょっと、頼み事があるんだけど。」
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