寄り添う花のように私はあなたの側にいたい
私は胸騒ぎを覚えた。

「親父は、僕を18歳で結婚させようとしていた。その準備だったらしい。ただその時の僕は、何も知らずにしずにのめり込んでいた。学校から帰って来ると、貪るようにしずと関係を持っていたよ。」

その遠い目をして語る保さんが、もう昔の事だと教えてくれていた。

「そしてしずは、何年かして他の人に嫁いでしまった。僕の事はただ、親父に言われて相手にしていただけらしい。」

「そんな!」

私は保さんの腕を掴んだ。

「そのしずさんって人は、独身だったの?」

「ああ。若い時に結婚したみたいだけど、直ぐにご主人が亡くなって、この家に奉公に来ていたらしい。後で聞いた話だと、僕の相手をする代わりに、給与も高く貰っていたそうだ。女って、怖いよ。お金の為ならまだ学生の奴でも、関係を持つんだなって。」

「……女は、嫌だと思った人となんて、関係を持たないです。」

私は、そのしずさんと言う人が、どんな人か知りたかった。

知りたいのに、知りたくもなかった。

訳が分からない。

ただ、保さんを取られた気がして、それだけが悲しかった。


「保さん。私、子供が欲しいです。」

「えっ?」

私は顔を上げた。

「私とは、子作りできませんか?」

保さんは、その綺麗な瞳をパチパチさせていた。
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