朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
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いつもなら無遠慮にそのドアを元気よく(那津さんに言わせるとマジで煩く)叩くのに、今日は臆病が自分を支配して、なかなか手を動かせない。
いつものように振る舞えるか、自信も無い。
早朝の優しい日差しが、廊下の大きな窓から燦々と差し込んでいる。
明るく眩しい光をたっぷり瞳に取り込んで
「今日も頑張ろう」って、毎日笑って前を向ける。
そういう強い自分なら、どんなに良かっただろう。
固まったようにドアの前で動けない自分が、
力が湧かない自分が、悔しい。
それでも息を吐いて、
ノックのために手と視線を上げた瞬間だった。
「っ、い、た!!」
ごん、と鈍い音は、おでこにくらった衝撃と共にやってきた。
一瞬すぎて、事態の把握に若干の時間を要したけど、咄嗟におでこに触れつつ前を見たら、驚いた顔の男がいつものラフな服装のまま、ドアノブに手をかけて立っていた。
「…ああ、悪い。
お前遅いから寝坊したのかと思った。
とりあえず下のコンビニに、朝飯買いに行くかって思って、」
「……、」
嗚呼。
やはりここに来たのは、失敗だったかもしれない。
___私は今、全然、いつも通り笑えそうに無い。
「…いたい、」
「悪い。まあまあ良い音して笑った。」
悪びれない那津さんが、笑いながら私のおでこに細い指でそっと触れたのと、きっと同じタイミングだった。
ポタ、となんの前触れもなく自分の瞳から零れ落ちたものに気がついたのは、私より男の方が早かった気がする。
「……は、?」
「す、いません、」
「…え、何。そんな痛かった?」
「……いえ、あの、朝ごはんはこれをどうぞ。
コンビニの食事ばっかりじゃダメだって、
いつも言ってますよね、」
焦ってすぐ朝食を持つのと反対の手でそれを拭って、那津さんの胸におにぎりの入ったバッグを押し付ける。
このままでは、まずい。
震える声で忠告だけして、
出直すためにすぐ振り返ろうとした
_____のに。
「、」
「……青砥。どうしたお前。」
私の腕を掴んで自分の方にぐ、と引き寄せる男の力の強さを感じた。
嗚呼、この人になら私は。
____いくらだって触れられても、構わない。
そして、もうとっくにそう思ってしまっていた自分を知って、また涙が出そうだった。