朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加





「なんだっけ、あんたんとこのデザイナー。
有名なんでしょ?

なんかうちの上層部、その人のデザイン気に入ってんだよね。その人が担当してくれるってだけで満足してるし、別にプロモの内容そのものなんか、そこまで誰も気にしてないよ?」


捨て台詞のように告げた横溝さんが、いつ席を立ってお店を出て行ったのか、よく覚えていない。

ただただ、その場に立ち尽くしていた。





『私、那津さんの作品だと
あれが一番好きかもしれないです。』

『どれ。』

『あの、化学繊維メーカーの周年広告ですね。』

『…民放のCMもしてないのによく知ってんな。』

『そりゃあ企業研究の時に”那津 依織”のいろんな作品、見ましたから。
でもあれは、那津さんのデザインだけじゃなくて、キャッチコピー含めて、凄く好きですね。』


『……お前見る目あるじゃん。』

『え、何ですか急に。偉そう。』

『別に?3年目のペーペーアカプラが担当してる案件、ちょっとやる気出たって話。』

『こんなに朝ごはん献上してるのに、まだやる気
ちょっとしか出て無かったんですか。衝撃。
早くデザインください。』

『お前ね、俺は結構忙しいって知ってる?』


___知ってる。

抱える案件が沢山あることなんか、
ちゃんと関わる前から、知っていた。


それでもあの忙しい彼が、頑張ってくれていた時間。


全て、本当はそんなの必要無かったと。

"ご利益デザイナー"の那津さんを前面に押し出して、勝手に進められていた、形だけのコンペだったんだと。


私はあの人に、どんな顔をして伝えれば良いの。



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