朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
落としてしまった涙の後悔はあるけど、絶対これ以上は泣いたりしない。
声の震えを抑えたくて深呼吸をして、自分より随分身長の高い男を見上げたら視線が絡んだ瞬間、綺麗な唇が私の名前を再度、ゆっくり紡いだ。
「青砥。」
「はい。」
「………お前、出来レースだとか、デタラメがどうだとか、どこからそんな裏事情知った?」
「、」
その質問にハッとして、息を呑んだのは恐らく男にも伝わってしまった。
昨日がフラッシュバックすると、体全身を貫く痛みに襲われる。
「………部内の、噂です。」
「ウワサ程度の信憑性の無い話で、
お前は泣いたりすんの。」
ぎゅ、と掴んだ腕に力を込めた那津さんの眉間には深く皺ができている。
この人に謝らなければと、そこばかり先行していた。
"なんだっけ、あんたんとこのデザイナー。
有名なんでしょ?
なんかうちの上層部、その人のデザイン気に入ってんだよね。その人が担当してくれるってだけで満足してるし、別にプロモの内容そのものなんか、そこまで誰も気にしてないよ?"
この人に全ては言えない。言いたくない。
苛立つように「嘘つくな。」と重ねる那津さんは、全然腕を離してくれない。
どうしよう、どうしたら。
どう逃げるべきか、少ない言葉の引き出しを必死に探していた時だった。
「____青砥!!」
背後から切迫した声で名前を呼ばれ、振り返ると昨日、私を笑って見送った課長が、困惑の表情を浮かべて駆け寄ってきた。
こんな早朝に、どうしたのか。
おはようございます、となんとか挨拶を告げようとしたら、
「お前、どういうことだ!?」
「……え?」
穏やかに差し込む陽の光に全く呼応しない語尾の高まった声は、簡単に私の動きを封じ込める。
「×社の担当の横溝さん、
相当お怒りで、俺に直接連絡が来た。」
「っ、」
昨日のこと、横溝さんにはとりあえずメールで謝罪をした。
私の行動が気に障ったのなら、とても申し訳ないと。
文字を打ち込む手はやっぱり震えたし、"私は謝ることをしたのだろうか"と思えば思うほどに辛かったけれど、仕事は2人の間だけで完結するものじゃない。
返信はもちろん無くて、改めて連絡をしなければと思っていたけど、こんな風に、先回りされるとは思わなかった。