朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
私は、全てが迂闊で、間抜けだ。
昨日彼から受けた言葉も行動も、
証拠なんて、何もない。
でもそれでも信じて欲しいと期待を込めて、事情を説明するために口を開こうとすると、
「昨日、会食にも誘われてたから順調なのかと思ってた。ああいう場は、適当に流して笑っておくのがルールだろ。
この案件は那津も居るし、もううちに決まってるようなもんだったんだから。」
耳を疑うような言葉が、鼓膜を強く叩いた。
「………課長、」
呼びかけの声は勿論、震えた。
ただひたすらに、私に話をする人を見つめると大きな溜息と共に困惑の中で自身の髪をガシガシと乱す。
「…課長は、これが出来レースだと、
ご存知だったんですか?」
「……横溝さんは、執行役員の御子息なんだよ。」
____それは、私が得たい解答じゃ無い。
そんなこと、関係が無い。
どこかで予感はあった。向こうの担当者が知っていて、こちらの責任者達が"出来レース"の事情を知らないとは思えない。
だけど、信じたく無かった。
まるで、分かるだろ?と促されてるかのような話し方に、何も紡ぐべき言葉が浮かばない。
それなのに、頭が真っ白になった時こんなにも吐き気に苛まれるものだったのか、とどうでも良い感想だけが浮かぶ。
分からない。
分かりたくもない。
"青砥、コンペ前に担当さんに気に入られてるの大きいな!大口案件で上も注目してるし、なんせデザイナーは那津だしな。最後まで頼む。"
____もしかして、最初から。
結果の決まっている大事でもなんでも無いコンペだからこそ、なんのキャリアも無い"横溝さんと年齢の近い私"を、あてがったと言うの。
「…出来る限り、無難にやり過ごせ。
向こうも、酔いがまわっての軽い行動があったかもしれないって、そこは謝罪してくださってる。
青砥の行動は、会社同士の信頼に関わる。
多少のことは、我慢して欲しい。」
私が昨日感じた痛みを、どうして、何も知らないこの人が”軽いこと"のように話せるのだろう。
___だって私は確かにあの時、
自分の心が泣いた音を聞いた。
もう、膝から崩れ落ちてしまいそうなほどに、絶望感の中で、身体を支える力が湧かない。
「_____おいクソ野郎。
お前その前に、青砥に聞くことねーのか。」
会話を暫く聞いていた彼は、そう言い放って課長から私を遠ざけるように前に立った。