朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
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"話し相手?"
「……ああ。うちのアシスタント、部屋にこもってばっかりだから話し相手を誰か用意したい。」
そのが郵便局へと出かけている間、鳴らしたコールはあまり待たずに、馴染み深い声に繋がった。
"俺で良い?"
「馬鹿か?」
お前で良いわけねえだろ。
"依織お前さ、ぜんっぜんアシスタントがどんな子なのか教えてくれないな。"
顔は見えない筈なのに電話越しの男は恐らく拗ねたような表情になっているのだと察しは付く。
相談する相手を、間違えたのか。
でも正直、本人には言えないにしても、こいつに対する気持ちを一言で表すならば「信頼」が1番しっくりきてしまう。
"そんなこと急に言われても、既婚者の俺が簡単に誰か紹介できるわけ、"
「……、」
"いや、簡単だった。
既婚者の俺が紹介できるのは愛する妻しか居ないけど?"
してやったりの声色で寄せられた提案に、また溜息を漏らす。
まあ、そうくるとは流石に分かっていた。
「……あの女に、初対面の人間との和やかな対話は実現可能なのかよ。」
"失礼だな、出来るよ。蘭子は人見知りだけど、ああ見えて割とお節介焼きだよ。可愛いな。"
「あーはいはい。
なんでも良いから蘭子に頼んどいて。」
こいつは嫁の話になると格段に言葉も声も糖度が増す。
被害を食い止めるには会話を終了させるしかないので、そうあしらってスマホを切ろうとすると「依織」とその動作の合間を縫うように名前を呼ばれた。
"…お前はこれ、どの立場で頼んできてんの?"
「…何が。」
"お人好しな上司?
それとももっと、特別な感情がある?"
「…上司に決まってんだろ。
お前らも巻き込んでるのは悪いけど、頼むわ。」
間髪入れずに答えたら、皇はそれ以上は何も言わず「分かった」と了承して通話は終わった。
あの男は、そういう奴だ。
そして人の心に土足で踏み込むようなことはしない。
どちらかと言うと、センスの良いスリッパを履きつつも、軽やかに心のドアをノックし続けて笑うタイプだ。
まあ、それはそれで厄介だし、結局そのドアを開けることになった鉄壁の女を知っている。
そのが事務所に来て、もうそろそろ2ヶ月が経つ。
朝起こしに行くと、小さな身体を猫みたいに丸めて眠る姿はやはりどこか頼りなく映る。
蹲み込んでその無防備な寝顔を見つめて、触れたいとかそういう邪な気持ちが大きくなる前に、セットされたアラームより早く起こして誤魔化すのが日課になった。
そのが眠る部屋には、小窓がある。
小さな枠から差し込む晴れた日の光も、曇りや雨の日の薄暗さも、起き上がってベッドの上でただじっと確認する女の横顔も、頼りない。
お前が朝と、向き合えるように。
そう思う気持ちは、
そのを連れ出したあの日から何も変わらない。
だけど、例えば此処からまた挑戦したいと。
新しい道へ踏み出す時に
俺はちゃんとお前の手を離せるのか。
その自信があまりに脆い足場の上にあって、今にも崩れてしまいそうなのだと、嫌というほどに自覚するようになっていた。
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"話し相手?"
「……ああ。うちのアシスタント、部屋にこもってばっかりだから話し相手を誰か用意したい。」
そのが郵便局へと出かけている間、鳴らしたコールはあまり待たずに、馴染み深い声に繋がった。
"俺で良い?"
「馬鹿か?」
お前で良いわけねえだろ。
"依織お前さ、ぜんっぜんアシスタントがどんな子なのか教えてくれないな。"
顔は見えない筈なのに電話越しの男は恐らく拗ねたような表情になっているのだと察しは付く。
相談する相手を、間違えたのか。
でも正直、本人には言えないにしても、こいつに対する気持ちを一言で表すならば「信頼」が1番しっくりきてしまう。
"そんなこと急に言われても、既婚者の俺が簡単に誰か紹介できるわけ、"
「……、」
"いや、簡単だった。
既婚者の俺が紹介できるのは愛する妻しか居ないけど?"
してやったりの声色で寄せられた提案に、また溜息を漏らす。
まあ、そうくるとは流石に分かっていた。
「……あの女に、初対面の人間との和やかな対話は実現可能なのかよ。」
"失礼だな、出来るよ。蘭子は人見知りだけど、ああ見えて割とお節介焼きだよ。可愛いな。"
「あーはいはい。
なんでも良いから蘭子に頼んどいて。」
こいつは嫁の話になると格段に言葉も声も糖度が増す。
被害を食い止めるには会話を終了させるしかないので、そうあしらってスマホを切ろうとすると「依織」とその動作の合間を縫うように名前を呼ばれた。
"…お前はこれ、どの立場で頼んできてんの?"
「…何が。」
"お人好しな上司?
それとももっと、特別な感情がある?"
「…上司に決まってんだろ。
お前らも巻き込んでるのは悪いけど、頼むわ。」
間髪入れずに答えたら、皇はそれ以上は何も言わず「分かった」と了承して通話は終わった。
あの男は、そういう奴だ。
そして人の心に土足で踏み込むようなことはしない。
どちらかと言うと、センスの良いスリッパを履きつつも、軽やかに心のドアをノックし続けて笑うタイプだ。
まあ、それはそれで厄介だし、結局そのドアを開けることになった鉄壁の女を知っている。
そのが事務所に来て、もうそろそろ2ヶ月が経つ。
朝起こしに行くと、小さな身体を猫みたいに丸めて眠る姿はやはりどこか頼りなく映る。
蹲み込んでその無防備な寝顔を見つめて、触れたいとかそういう邪な気持ちが大きくなる前に、セットされたアラームより早く起こして誤魔化すのが日課になった。
そのが眠る部屋には、小窓がある。
小さな枠から差し込む晴れた日の光も、曇りや雨の日の薄暗さも、起き上がってベッドの上でただじっと確認する女の横顔も、頼りない。
お前が朝と、向き合えるように。
そう思う気持ちは、
そのを連れ出したあの日から何も変わらない。
だけど、例えば此処からまた挑戦したいと。
新しい道へ踏み出す時に
俺はちゃんとお前の手を離せるのか。
その自信があまりに脆い足場の上にあって、今にも崩れてしまいそうなのだと、嫌というほどに自覚するようになっていた。