朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
そしてそこから2日も経たず、
そのは事務所を出て行った。
今日からもう、復職に向けて動いているのだと思う。
朝は起きられたのか、
ご飯はちゃんと食べたのか。
まるで父親のような質問を浮かべながら、そういうのとは別の、もっと扱いづらい感情も捨て去れない自分に苛立つ。
《なあ、ほんっとうに没?》
《しつこい。没。》
《じゃあせめて、伝えたかった人に送れば?》
《良いんだよ別に。伝わらなくても。》
昨日、タイミング良く皇が送ってきたメッセージを見て溜息を漏らす。
無我夢中だった。
皇が以前持ち掛けてきたプロモーションの依頼は確か「日常に寄り添う」がテーマだと思い出した。
一気に創り上げたラフを勢いのままにこの男に送ったら、やけに気に入って「もうこれで上にかけ合う」と言い出して慌てて止めた。
理由は明白だ。
その作品を見返したら、あまりにもそれは、
皇の会社のことをイメージしたとは言い難い。
あの小窓を、ベッドからポツンと毎朝見つめていた頼りない横顔に語り掛けた言葉ばかりが並んでいた。
《こんな、クライアント置いてけぼりの作品提出したって言ったら多分怒るアカプラが居るから。》
"信頼関係を築くには、
先方との密な連絡が必須なんですよ。"
よくそんな風に言っていたあの女が、こんな作品の作り方を知ったら、「また部屋にこもって、共有事項確認してくださって無いですね!?クライアント無視しちゃダメです!」と勢いよく突っ込んできそうだ。
「…、」
集中力が完全にやられた。
元アシスタントが淹れてくるコーヒーはいつも熱くて、ちょっと冷ますのが日課だったけど、そんな必要はもう無い。
頑なに勤務中は「那津さん」と、その姿勢を崩さない馬鹿真面目な所を揶揄うことも無い。
多分最初から、すげえ可愛かった。
そうだ、何一つ難しいことは無かった。
あいつが笑ったら嬉しかったし、
傷つけられたら苛立って守りたかったし、
泣いていたら傍に居たかった。
『これは何のハグ、ですか。』
”上司だから”なんて、自分でも笑える。
言えるはずが無い。
そんなもんで取り繕えたら苦労しない。
___お前が好き以外の理由があったら、
こっちが教えて欲しい。
愚かな自白が仕事部屋で滑稽に漂って、椅子の背もたれに身を預けて天井を仰ぐと、スマホが鳴った。