朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
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カーテンをうんと悩んで選ぶ様子さえ、面白がられていたけど。
その後も、キッチン用具だとか、食器だとか、男が気まぐれのように思い出して口にしては、購入するものが増えるから、ついていくのに必死だった。
「こんな一気に買い物したことないわ。」
「……わ、わたしの趣味ばっかりになったよ?」
購入時の決め手を、「お前はどれがいい?」と委ねてくるから困ってしまった。
それでも例えば"この色が好き"、とか"こういうキッチン用品なら使いやすい"と躊躇いつつも告げる度に
、頷くだけの男はそのままレジへ足を進めるから、もっと戸惑った。
「うん。そういう風に仕組んでるから。」
「仕組むって…、」
商業ビルを出ても、男はそれなりの重さがある筈なのに片手に買い物袋を持って、繋いだ手は離そうとはしない。
時間はすっかり夕方を越えて夜に差し掛かっている。平日の地下街が、帰路につく人々で混み合い始めていた。
買い物の途中で「事務所に戻らなくていいのか」と聞いたら「今日は臨時休業」と、またきっとそこで咄嗟に思いついた理由を告げられたことを思い出す。
「じゃあ私はこのまま、自宅に帰るのか」と自分の最寄駅に繋がる電車の改札を横目に見ながら、勝手に寂しくなってしまった。
「その。」
「?」
「俺は結構浮かれてるし、そして必死。」
「え?」
前を歩いていた男が立ち止まって、こちらを見やる。鋭い瞳がつくりだす眼差しに吸い寄せられるように、ただじっと見つめた。
人の往来の激しいこの場所で、立ち止まって向かい合う私たちだけが取り残されているような感覚になる。
「…彼女が出来たことに浮かれてるし、」
「、」
「その彼女が、どうしたら俺のマンションに来たくなるか、策を講じるのに必死。」
「……、」
浮かれてるし、必死ならそんな風に、さらっと告げたりしないで。
そう文句を言いたい気持ちは山ほどあるのに、身体ぜんぶの温度が急に上がったせいか言葉が上手く紡げない。
「まあ、そんなすぐ引越すとか出来ないって分かってるにしても。
でも今日は、流石に家に帰す気、無いけど。」
とっくに、ぱくぱくと滑稽に口を動かすだけの私に、その目尻を少し下げて微笑む男が、より一層攻撃力の高い言葉を畳み掛けてきた。