朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
「…その。」
「はい。」
「聞いてんの?」
「き、聞いてる。」
じゃあ反応しろよ、と可笑しそうに笑いながらそっと頬にかかる髪をよけてくれる男は、やっぱり余裕があって、さっきの"必死だ"なんて、嘘な気がする。
買い物した袋だって全て依織が持っていて、私は身軽な筈なのに、私の方が随分といっぱいいっぱいなのは明白だった。
「一緒にいるの、嫌?」
なんて聞き方をしてくるのだろう。
手を繋いだまま顔を覗き込んでくる端正な顔立ちをただ睨んだら「なんで怒ってんの」と笑われた。
「……依織の家に、行きたい。」
「うん。」
「で、でも、」
「ん?」
私の返事を聞いて恐らく自身の最寄りに繋がる電車の改札へと、歩き始めようとした男の手を必死にくん、と引っ張った。
"その前に一回家に帰らせて欲しいし、理由は絶対聞かないで欲しいし、もはや何も言わないで"
そう早口で真っ赤な顔も自覚しつつ提案したら、数秒の沈黙の後、分かったと愉しそうに笑われた。
こんなことになるなんて、
微塵も考えてなかったから。
一応私にも、服装とか化粧品とか、あとはやっぱり下着とか、そういうことは、この男の前でならどうしたって気になる。
1番気になってしまう下着は、今日自分がどんなものを身に付けていたかさえ記憶が危うい。このままは無理。
絶対この男に、そんなことは言えないけれど。
「別になんでも良いのに。」
「え?」
「どんなんでも可愛いって言ってんだよ。」
「な、何が!!?」
「え、言って良いわけ。」
「何も言わないで…!」
ちぐはぐな回答をする私に、なんだよお前、とまた楽しそうに空気を揺らして笑う男が結局とても愛しいから、困り顔のままに私も釣られて破顔した。
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そうして自宅に寄ってから、初めて足を踏み入れた家のソファの上で、私は、男から降るキスの雨をただ、受け入れている。
「……いお、り、」
「間で喋んな。」
「、」
先程までの触れるだけのものを可愛いなんて思っていたのも、ほんの束の間だった。
頬に添えられていた筈の手の一方が、首の後ろ辺りに回されて、それに気付いた時にはキスの深さが増した。
あまりの急展開に、うまく頭がついていかない。
夜ご飯も済ませてから此処に来たし、
後はもう寝るだけ、なのかもしれないけど。
「…っ、ん、」
呼吸するのも難しい方のキスに変わってしまって、思わず漏れた声がただ、恥ずかしい。
依織の肩に添えていた手で、シャツをぎゅっと掴んだらやはり少し、笑われた気配があった。