朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
遠くなった男の声を寝そべったまま聴きながらも、心臓の音は波打つことをやめそうに無い。
依織に覆いかさぶられて、逃げ出したくなるくらい恥ずかしさと緊張を抱えていたのに、1人でベッドに取り残されたら、今度はちゃんと寂しさを抱えるんだから私は面倒な人間だ。
今扱ってる案件についてなのか、男の電話はまだ終わりそうには無い。
「だ、だめだ、」
あのまま電話がかかってきてなかったら、とか色々と考えると身体がぼうっとまた熱くなる。
何かして気を紛らわせたい、と思うとその方法がどうしても仕事になるのは、やはりあの社畜な上司の下で働いているからだろうか。
起き上がって、部屋の電気を付ける。
そのままそっとリビングに向かうと、スマホ片手に自分のタブレットを見つめる男と視線がぶつかった。
「どうした」と目で尋ねられた気がしたけど、へらりと曖昧に笑ってテーブルの近くに置かれた自分のバッグに近づく。
一度自宅に帰った時に持ってきていたノートパソコンを取り出して、再び寝室に戻ってそれを開いた。
さっき、ちらりと会話の中で◆社と聞こえた気がする。以前、私は主担当では無かったけど先輩とその会社の広告に携わったことがある。
キーパッドを操作して、どんな案件だっただろうかと記憶を辿って探っていると、
「その。」
電話を終えたのか、寝室の扉近くでそう名前を呼んでくる男の顔が少し不機嫌に歪んでいた。
「…あ、終わったの?」
「何をしてんのお前は。」
ベッドで両膝を立てて座りつつ、ノートパソコンをその上で不安定ながら支えていたから、男が近づいてきて隣に腰掛けてきた瞬間、スプリングが揺れてパソコンも揺れた。
「、」
慌てて持ち直そうとしたら、私の手を阻止する男がもう一方の手でそれを奪って、ぱたんと閉じてしまう。
そのまま没収されたパソコンは、サイドテーブルに置かれてしまった。
「……その。」
「…◆社さん、前に、関わったことあるから何か役に立てることないかなと思って…、」
また名前を呼んで、隣から顔を覗き込んでくる男に、従順に言葉が漏れていく。
「電話で放置されて拗ねるのかと思ったら、むしろまさかのそっちも仕事始めてるんですけど、俺の彼女どうなってんの。」
「……ど、どうって。」
ぐい、と顎を掴まれて無理やり視線をぶつけられた。綺麗な顔立ちは、私を真っ直ぐに見つめていて簡単に囚われてしまう。
「…嫌だった?」
「え?」
「さっきの。お前が嫌なら、無理にはしない。」
"さっきの"って、何のことですか、と聞かないとわからないほど私も流石に鈍くは無い。
だって、その流れに恥ずかしくなって、仕事に逃げたところが大きいのに。
頬が赤みを帯びていく一部始終を、この状況では依織に見守られてしまう。
____でも私だって、
嫌とか、そういうことじゃない。
どう言えば良いか分からず、でもきゅ、と男のスウェットを弱く握ったら溜息をこぼされてしまった。
「やっぱ無理。」
「え。」
「照れてるだけとかそういうのなら、我慢しない。
流石にもう、俺はお前のこと抱きたい。」
直球な言葉に、反応を返そうとしたその全てを、重ねてきた唇に呑まれてしまった。