朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
そのまま唇が重なり合いながら、再びベッドに組み敷かれてしまった。
身体ぜんぶで鼓動が成されている感覚に、少しの怖さもやはりある。
社会人になってから恋愛方面はめっきりご無沙汰で、当然そういう経験だって長らく遠ざかってしまっていて、もはやセカンドのそれだと言える。
ちゅ、と音を鳴らせてキスを続けていた男がリモコンで電気を消したことで、再び暗闇の中で視線が混ざり合う。
「……心臓の音、凄いけど。」
「とても緊張していますので。」
素直な感想に、少し吹き出して見下ろしながら笑ってくる男は、やっぱり余裕だと思う。ちょっと面白くなくて、ぎゅうと自身の両腕を男の首に回す。
「…どうした。」
「依織は、余裕そう。」
その余裕を崩したいなんて途方もない願望はあるけど、その方法は残念ながらよく分からない。
というか、そんなの今の自分では無理な話だ。
"流石にもう、俺はお前のこと抱きたい。"
先程のこの男からの直球すぎる言葉に対して、自分の中の覚悟だけはなんとか決めて、直ぐそばにある頬に躊躇いつつキスをした。
「良いよ」と言うのはとても恥ずかしかったから、その代わりの返答になっただろうか。
もう今日だけでも何度も唇を合わせているくせに、自分から、となるとそれが例えば頬でも全然恥ずかしい。
驚いた表情を見せた依織は、その後少し顔を顰めながら、だけどその険しさにそぐわない優しい手つきで私の頬を撫でる。
「…お前今日、仕事のオンとオフがどうとか言ってきただろ。」
「え?…あ、うん。」
___『確かに、那津さんは仕事のオンとオフ、ちゃんとするようになったんだなって思ってました。』
『は?』___
もちろん覚えている。
だって凄く怪訝な顔をされたし、なんなら「ムカついた」とまで言わしめた。
「検討違いでしたか。」
「本当に検討違いの0点だった。」
「え、そんなに?」
我ながら凹む。
だけど欠かすことなく毎日、夜は事務所からこの自宅に帰っていたから、仕事を朝まで持ち越すことはしなくなったのだと、生活習慣の改善だと思っていた。
「…お前な、逆に聞くけど俺が夜もずっと一緒にあの事務所に居たらどう思う。」
「……え。」
「こっちはちゃんとセーブするために態々家に帰ってたのに、お前は全くそこへの意識無かったわけ。」
「…セーブ。」
「我慢できる自信も余裕も、
無かったって言ってんだよ。」
何を、とはもう聞かない。
言葉一つ、仕草一つでこんなにも胸が高鳴ってしまう人を私はきっとこの男以外に知らない。