朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加


そこからも、ずっと、丁寧だった。

長い愛撫の後、呼吸が乱れて肩を上下させる私は、もう男が身体のどこに触れたって、すぐに震えてしまうくらいには、敏感になっていた。


「…その触り方、やめて、」

「なんで。」

「びくってなるから。」

「うん、なるように仕向けてる。」

「…やっぱり、酷い仕打ちだ。」


「だから何が。」と緩く笑った男は、そのまま私の背中に逞しい腕を回して、今までで1番強く抱きしめてくる。

寝癖のつきやすい細い猫っ毛が私の頬に触れた時、「擽ったいよ」って笑えたら良かったけど。

この温もりを手離そうとした自分が居たのだと思うと、傍で存在を確かめられることに、涙が滑り落ちる。


「その。」

直ぐに異変に気付く男が、片手でそれを拭ってくる。窺うみたいな瞳には、ちょっと不安が揺れていて、慌てて「ちがう」と微笑んだ。


「…私、もう、言えるよ。」

「…なに?」

「明日、どんな天気でも、落ち込んでも、
依織が隣に居たら、おはようって、言える。」

スルリと口にしたのは、
背伸びをしてない本音だった。

鼻先が触れ合う近さで、その言葉を聞き終えた男の表情の解れ方が、少し泣きそうに見えた。


「だいすき。」

言葉にしたら、たったの4文字だ。

どんな声色で、どんな速さで、どんな風に紡いだら正解なのかは、きっとこれからも分からない。
もしかしたら正解なんて、無いのかもしれない。

届いて欲しいと、それだけはひたすらに願いながら音にしたら、また涙がこめかみを伝ってシーツに吸い取られてしまった。

それを受け止めるみたいな、宥めるみたいな口付けを落とされて、その重なりが舌を絡ませ合いながら深くなった時、


「っ、…あっ、!」

ゆっくりと押し入ってきた熱に、キスの合間でまた声が溢れた。

目の前の端正なつくりの顔が、何かを耐えるみたいに少し眉を寄せて歪んでいて、いつもと違う表情に下腹部がより、きゅうっとなる。

自分にそうしてくれたように、男の綺麗な瞳にかかる前髪をゆっくり避けてあげたら、その隙間から透き通る眼差しに出会う。

柔く細まる目元の端っこにそっとキスをして、そのまま汗ばんだ背中に再び腕を伸ばした。



暫くじっと同じ姿勢で抱き合っていたけど、次第にゆるく男が動き始めると、私の嬌声も、もっと上がってしまう。


「…その、力入り過ぎ。」

「っ…、ん、抜きかた、わからな、い、」

ただしがみついて、もうどうにも自分ではコントロールの効かない身体だと訴えたら、熱っぽい息を吐き出す男に、乱暴な口付けを食らう。


「俺の方が、よっぽどしんどいわ馬鹿。」

「…え、?」

困ったような、ちょっとこちらを非難するような細まった瞳をぶつけられて、ぼやついた視界では、ただぼうっと見つめてしまう。

「可愛いから無理させたくないけど、
ちょっともう色々限界も迎えてる。」

「…、依織、すき、」

「ほらな煽るだろ」と、難色を示しながらも、眉尻を下げて髪を撫でてくる。

ぴったりと何の隙間も無く抱き合うことは、こんなに幸せだったのか。
ぽろぽろ溢れる涙は随分止まらなかったけど、飽きずに指と唇で拭ってくれる優しさがやっぱり愛しかった。

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