朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
そう感じたら心が熱で侵食されて、身体が勝手に動いた。両膝をついた状態で身を乗り出して、まるで子供みたいに男の首に自分の腕を回して抱きつく。
意外な私の行動に恐らく驚きつつも、結局受け止めて私の背中に逞しい腕が添えられた。
「…無視ですか?」
暫くそうしていた後、揶揄うみたいな声色でまた促されて、腕を離して依織の足の間に、向かい合うように座る姿勢に戻る。
全部包み込むみたいな眼差しに吸い寄せられるように、1つ呼吸を置いて。
「……お"はよ"。」
丁寧にそう告げた筈なのに、自分が出した声の意外さに、私も目の前の男も、沈黙の中でお互い目を丸くして数秒間、見つめ合ってしまった。
「……え、今の何。」
「…な"んか声、あん"まり、出な"い、」
思えば、これが今日の第一声だった。
声が、とても掠れていることに今更気付く。
喉に片手を添えて異変を訴えたら、依織は直ぐに私の額に手を当ててきた。
「熱とかは無さそうだけど、身体しんどい?」
倦怠感は凄いけど、別に体調の異変は無い。
ふるふると首を横に振って、なんとなく心当たりを感じてしまって、言うべきかと迷っていると、
「……昨日のせい?」
「、」
その心当たりをすぐに言い当てられて、見つめあったままに顔の熱は上昇した。
その一部始終を見守った男は、切れ長の瞳を瞬きさせて、それからゆっくり細くする。
そっと頭を引き寄せてまた抱きしめられたら、クスクスと空気を揺らす男に全て包まれてしまう。
自分と同じ柔軟剤の香りが鼻腔を擽る中でも少しだけ違う香りも混ざっていて、それがとても好きだと思った。
「…なんなのお前は。」
なんなの、と言われても。
というか、こちらが誰のせいだと言いたい。
「昨日、声も可愛かった。」
「……、」
わざわざ耳の近くで伝えてくるのは確信犯だ。
なんてことを言い出すのだろう。
一度だけ背中を叩いたら、もっと抱きしめてくる腕の力が強くなってしまった。
そしてその殆どが笑いを占める楽しそうな声で、
「まさかそんな、渋い演歌歌手みたいな声で
挨拶されるとは。」
と、思い出しながら伝えられた。
そりゃこっちだって、もうちょっと可愛い感じで言いたかった。
不服な結果に眉を寄せていると、腕の拘束を少し解いた男が直ぐに私の頬に口付けを落とす。
「お詫びに俺が、朝食作る。」
何を作ってくれるのだろうと想像すると、結局ふと目元を解してしまう私の負けだ。
それを見守って、依織も同じように微笑んでくれた。