花を愛でる。



「いえ、私も……そのことを聞きたいと思っていました」

「田崎さん……」

「でも、私も彼の助けにはなれそうにはなくて……」


彼にとって私が早乙女さん以上に役に立たない存在なのは分かっている。
だけど、それに屈しないって決めたから。


「だから話してほしいんです、彼が抱えている問題が何なのか。早乙女さんが……抱えている気持ちも……」

「……」

「私は……ただの秘書です。それ以上の何物でもない。彼と同じ土俵に立てるだなんて思っていない。それでも秘書として、出来る限りの力にはなりたいと思っています」


まだ出会って間もない私に早乙女さんが社長について話してくれるなんて思ってもない。
今私に出来るのは誠心誠意、彼女と同じ気持ちでいることと、その力になりたいということを心に訴えかけるだけ。

目は逸らさない。逸らしたら、私の気持ちも揺らぐ。

と、


「やっぱり、そうだったんですね……」

「え?」


早乙女さんは突然表情を緩め、小さな微笑みを浮かべた。


「もしかしたら、田崎さんも私と同じ気持ちなんじゃないかと思っていました。だから、あの時思わず話してしまったのかも」

「……」

「田崎さんが良ければ聞いて欲しいです。それで、遊馬さんの力になってほしい。私の、代わりに……」


その表情から彼女がこれまで背負ってきたものの重圧感を感じた。
それでももう引き返せないところにまで私は脚を踏み入れてしまった。


「そうですね、それじゃあ少し遡りますが遊馬さんと出会ったころの話から……」


早乙女さんがそう口にしたと同時に、部屋の扉がノックされ、吉川さんら使用人の方たちが夕食を運んできた。


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