花を愛でる。



──────────────────
─────────────
─────────




翌日、仕事を定時で上がると私は黛オフィスタワーに訪れていた。
昨晩届いたメールに「何か用事ですか?」と返したのだが、彼から返信は来ることはなかった。その為、必然的に何の話なのかを確認するために脚を運んだ。

黛会長から呼び出されたこと、相変わらず社長には伝えづらくて黙って出てきてしまったけど。
だけどあの人だって今裏で何をしているのか私に教えてくれていないのだし、お互いさまというやつなのではないだろうか。

受付に会社と名前を伝えると当然のように社長室へ通される。
重たい扉を開くと顔を見せた男は「来たな」とにたりと口元を歪ませた。


「のこのこやって来るとは、素直になったじゃないか。従順な女は嫌いじゃない」

「兄さんが呼び出したんだろ。田崎さん、わざわざありがとう」

「い、いえ、私も聞きたいことがあったので」


相変わらず堂々としている黛会長と対照的に優しくフォローを入れてくれる彼の弟で秘書の黛さん。
私の方を見てにこりと微笑んだ黛さんにどう対応していいのか分からず、私も何とか表情筋を動かして苦笑いを浮かべる。

そんな私たちの様子を見ていた黛会長は「ふむ」と、


「お前たち前からそんなに仲良かったか?」

「え?」

「まあいい。女、今聞きたいことがあると口にしたな。俺の要件より先に聞いてやる」


一瞬私と黛さんの間を勘繰られたような気がしたが、出来れば勘違いだったと思いたい。
私は改めて椅子に腰かけている彼と向き合い、ここ最近の社長の動向を探った。


「社長は今、何をしているのが知っていたら教えていただきたいです」

「知らんな。ただ以前よりは前向きに自分のことを考えるようになったんじゃないか? これで漸く張り合いがあるというものだ」

「……社長は会社を辞めることになるんでしょうか?」

「それはそうだろう、今更何を抜かしているんだ? それを覚悟してアイツを説得したんだろう」

「っ……」


< 139 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop