花を愛でる。
数日後、他社との会食の為、高級料亭に訪れていた時だった。
その晩は接待ということもあり、座ることもなくひたすらに相手会社の社員にお酌し続けていた。
得意先の役員だらけの会食で、いささか居心地は悪かったがこれも仕事の一環だと自分を納得させる。
なによりも普段は不真面目な社長が立場を低くして対応している姿を見ていると、文句の一つも言えなくなるものだ。
「ほらほら、お嬢さんもお酒注いでばっかいないで呑みな呑みな」
「え……」
丁度お酌をしていた男性に腕を引かれ、無理矢理その場に座らせられる。28歳の私をお嬢さんと呼ぶなんて、と顔を確認したが顔の火照り具合や気が荒立っている様子からかなり酔っているようだ。
差し出されたお猪口に注がれる日本酒。勿論職務上、それを口にすることは許されない。
「ありがたいのですが私は大丈夫ですので」
「俺の酒を断るって言うのか?」
「(ええ……)」
こういう場でお酒を断ると尚更空気が悪くなると聞いたけれど、今がその場面なのかもしれない。
どうしよう、アルコールを摂取したら仕事にならなくなる。呑んだふりをしてこの場をやり過ごそうか。しかしそれもバレたらまた絡まれてしまうかもしれない。
少しだけなら、とお猪口に手を伸ばすと寸前でそれが違う誰かの手に渡った。