花を愛でる。



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「ここが……」


タクシーで降ろされたのは高層マンションのエントランス前だった。
一ヵ月の家賃だけで私の給料が吹き飛びそうなくらい高そうだ。

途中外の空気を吸えたお陰で社長が吐くこともなく自宅に辿り着けたのは不幸中の幸いだったとも言える。
何とか彼の身体を支えながらエントランスに入ると厳重なセキュリティーを抜けて最上階の彼の部屋へとエレベーターで向かう。


「着いた……」


彼を部屋へ運び込むと彼ごと広い玄関に雪崩れ込む。その拍子に彼が床と頭を打って鈍い音が部屋に響いた。


「いって。あはは、田崎さん運び方雑~」

「ここまで運んだだけ評価してくれてもいいのでは」


まだ酔いが覚めていないのか、ふわふわした口調の彼に呆れながらも「ついでにベッドまで連れて行って」というお願いを素直に聞く。
彼がこうなってしまったのは絡まれた私を助ける為であったし、こうなったら最後まで面倒を見るしかない。

彼の指示で広い廊下を進むととある扉の前に辿り着いた。ここが寝室なのだろうか。ゆっくりと扉を開くと中はベッド以外は何も置かれていない部屋だった。
壁も天井も真っ白で、閉まり切っていないカーテンの隙間から青い月の光が注がれていた。


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