花を愛でる。



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その日から仕事が終わり帰宅しても机に向かい、参加する人物の情報が書かれてそのファイルの内容を頭の中に叩き込む。
しかしこれだけの人間の情報を彼はどうやって集めたのだろうか。私の知らない筋があるに違いない。しかし今私が気にすることはそこではなく、パーティー当日までにここにあることを暗記し、彼の隣に立つ人間になることである。


「(凄い、娘さんの好きなアニメまで載っている……)」


この情報が実際に役に立つときは来るんだろうか。





そしてパーティー当日、


「それでは今後ともよろしくお願いします」


社長と握手を交わした得意先の相手が車に乗り、走り去るまでを頭を下げ見守る。
今日の業務はこれで終了、つまりこれから彼と一緒にパーティー会場であるホテルへと向かう。


「(この建物からだとホテルまでは20分、か……)」


タクシーを呼びますね、とスマホを取り出すとそれよりも先にスマホを耳に当てていた彼はそれを制した。


「今迎えを呼んでるから一緒に行こう。それでいいね?」

「……はい」


こういうときに限って行動が早い。しかしそれは私の仕事だけど。
仕事を奪われやることをなくした瞬間、私は無意識にふわっと口を開けて欠伸をした。

隣からの視線を感じ、ハッと我に返り口に手を当てる。


「寝不足?」

「……」


彼が口元をニヤつかせていた。誰のせいで昨日夜遅くまで起きていたと思っているんだ。
しかしここ数日寝る間も惜しんで人物の情報を頭に入れ、最低限のマナーも身に着けた。これで彼に恥を掻かせることはないはずだ。



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