花を愛でる。



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結局金曜と土曜の二日に渡って社長に振り回され、実質落ち着けたのは日曜日になってからだった。
だからこそ月曜日からは秘書業務に励もうと再度気を引き締めていたのにも関わらず、出社して直ぐにハプニングは起こった。


「遊馬さんの婚約者です。彼に会いに来ました」


朝からガツンと頭を殴られたような衝撃が私を襲うと同時に目の前が真っ白になった。
そうだ、彼は次男と言っても向坂グループの御曹司。婚約者という存在がいないはずがなかった。

ただ彼が女性と遊んだりしていてそういう態度を取っていなかったから。


「あの……?」


思わず固まってしまった私を心配そうに見上げる彼の婚約者と名乗る彼女。
しかし見れば見るほど幼い彼女に「本当に社長の婚約者なのだろうか」という疑問が浮かんでくる。今32歳の社長とこの中学生が婚約者?

とにかくここは秘書として穏便にことを済ませないと。


「申し訳ございません。朝にお客様が来られると向坂から聞かされていなかったので」

「そ、それは……遊馬さんに連絡が取れなくなってしまったのでここに来るしか手がなくて」

「連絡が取れない?」


何故、いやこの子が本当に彼の婚約者と決まったわけじゃない。もう一度情報を精査しよう。
彼女が着ているフリルやレースを過剰にあしらった洋服はいわゆる“ロリータファッション”と呼ばれるもの。幼い顔立ちと相まって西洋のおとぎ話の中から飛び出してきたかのようだ。


「……分かりました。向坂に確認を取りますのでお名前を伺っても?」

「あ……はい。私は早乙女雛子と申します」

「早乙女……」


何処かで聞いたことのあるような苗字だ。私は失礼して一旦部屋から出るとスマホで社長の連絡を呼び出す。
しかし何と伝えるのが正しいのか。貴方の婚約者が会社に訪ねてきてますよ?とか。まだ婚約者と確定したわけではないのに?


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