丸重城の人々~前編~
「姫も必死なんだな…!俺達が姫を守りたいと思うのと同じ様に、姫も俺達を守りたいと思ってんのかもしれない」
「そこが、柚希ちゃんだな…。
自分が犠牲になったとしても、大切な人を守りたいって気持ちが強い。
あんな小さな身体で、必死に」
「だから、俺が守りたいんだ。
柚が笑ってくれるなら、なんでもする」
「俺だって、柚希の笑顔に救われてるんだから!」
「俺も姫だけだ。まっすぐ俺自身を見てくれようとしてくれた女は。だから、守りたいと思ったし」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その頃の柚希。
「ハッ!!」
ガバッ━━━━
「あ、夢か……。
最近変な夢ばっか見るなぁ……。
え…大、翔?」
大翔がいない。
「え?なんで…?
あ、そうよ!トイレだ!」
自分に言い聞かせる。
怖い……。早く帰ってきて…大翔。

コンコン━━━━!
「え?誰?」
窓の方から音がする。
「柚希!」
え━━━━この声……

「え……忠司…く、ん?なん、で……」
そこには大翔と出逢う前に付き合っていた、多摩 忠司がいた。
「迎えにきたよ!手紙読んでくれたでしょ?」
ガラス越しに話しかけられる。
「手紙……。
じゃああれ、全部…」
「そうだよ?俺と一緒に帰ろ!」
「嫌…私は今幸せなの……」
「は?幸せ…?あんなチンピラと幸せになれると思ってるの?てゆーかさ、ここの連中全て、チンピラじゃん!びっくりだよ。柚希があんな連中に騙されてたなんて!」
「みんなのこと、悪く言わないで!」
「は?柚希は俺のモノでしょ?
悪かったと思ってるよ。ちょっと束縛し過ぎたこと」
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