丸重城の人々~前編~
「何……こ、れ?」
響子も震えている。
「まさかずっと一人でこれを抱えて…?」
玄も顔を歪ませながら、言った。
ガン━━━━!!!
「これ。完全なストーカーじゃねぇかよ…!」
思わず、テーブルを殴り身体を震わせる中也。
「昨日、朝たまたまトイレに起きた時に、見かけたんだ。声をかけたが“大丈夫”しか言わなくて……。
その時に紙を握りしめてたんだ、柚希ちゃん」

「絶対に………赦さない……」
大翔の静かな怒りが、部屋中に響いた。
それは大翔以外の四人も同じ気持ちだった。

怒らせてはいけない人間を、怒らせてしまった。

「後悔させてやる」
と中也。
「簡単には死なせない」
と玄。
「一生、生き地獄を味わわせてやる」
と将大。
「今度は私が守る」
響子も静かに、呟いた。

「将大、調べられるか?これ、やった奴…」
「あぁ、任せとけ!すぐに見つけてやる!」
将大はすぐどこかに電話をかける。
「━━━至急頼む!」
「大翔、もう少しだけ待ってくれ!」

「でも、どうして?」
「あ?」
「柚希はどうして“助けて”って言わなかったんだろ…」
響子の悲痛な言葉。
「柚は…最近よく言うんだ。
“私もみんなみたいに強くなりたい”って。
もしかしたら、一人で解決しようとしてたのかも」
「だからって!柚希は病気のこともあるんだぞ!
それに俺は不謹慎だけど、このまま克服できなくても、兄貴がいない時の代わりになれるなら、このままでいいとさえ思ってんのに」
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