丸重城の人々~前編~
「ん……」
「あ、柚!?」
「や、まと…」
「柚……」
柚希の手を握っていた、大翔。
優しく微笑み、柚希の頭を撫でた。
先程の大翔とは、別人のように。

「柚希……」
「姫、よかった!」
「柚希ぃ」
「ほんと、よかった。柚希ちゃん、たいしたことなくて」

幸い、頭の怪我だけで済んだ。
脳にも異常無しだと言う。

「悪かったわ。今回…。
とてもいい子だと思ってたのに、私の目も節穴かしら……」
「もういいよ……広ばぁ。俺も言いすぎた。悪かった……」

「大翔…」
「ん?どうした?どっか痛い?」
「私と……離婚…」
「柚?」
「離婚…して、くださ━━━━━」
「やだよ!絶対しない…!」
「でもね、そうしないと……大翔の大切なカフェ……潰れるの……そんなの嫌!」
「どうってことねぇよ!やれるもんなら、やればいい。それで潰れるような店は作ってない。俺は!」
「大翔…?」
「柚…俺は俺の店で、クレームうけたことないんだぜ!それは自慢なんだよ!だから、そんなことで潰れたりしないし、その程度の店ならいらない。また一からやり直すだけだ!」
「柚希、兄貴を信じてやってよ!兄貴はスゲーでかい族をまとめた奴だせ!そのことは柚希が一番知ってるでしょ?」
「そうだよね…」
「柚、いつも傷つけてばかりでごめん…。
俺達が暴走族だったばかりに……」
「それは覚悟してるよ!大翔とお付き合いするって決めた時から…!だから、大丈夫だよ!」

柚希の優しい笑顔が、みんなの生きる証だ。



一旦・終
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