丸重城の人々~前編~
「ごめんね…あの中に入るの怖くて…車で待ってようってことになったの」
まだ震えが止まらない、柚希。
「そうよ!だから大中が悪いのよ!」
「あ…ごめんな…柚」
大翔が柚希を抱き締める。
「アイツ等、しつけぇんだよ……。一応女だから、やんわり断ってたんだよ。でも柚希、ごめん」
中也も弁解する。
「━━━!
大翔、響ちゃんと席かわって?」
突然何かに弾かれたように、大翔から離れる柚希。
「え?なんでだよ?柚」
「今の大翔やだ…。
響ちゃん、一緒に座ろ?」
「もちろん、いいわよ!
ほら大!代わって?」
「は?やだよ!柚。なんでそんなこと言うんだよ!?」
柚希を無理矢理抱き締めて言う。
「嫌なの!とにかく今は嫌!」
必死に大翔を押し返している。
「柚希嫌がってんでしょ?どきなさいよ!」
響子が後ろの席のドアを開け、大翔の肩を持つ。
「あ?響子…ふざけんなよ……」
「私に凄んでも、全く効果ないわよ…」
「大翔、やめて!響ちゃんにそんなこと言わないで!大翔は助手席に座って!」
「柚~」
「兄貴、よくわかんねぇけど、諦めろよ!てか、遅くなるから駄々こねんなよ!ダセーよ!」
「わかったよ……」
しぶしぶ、助手席に座った。

席を代わると、響子にすり寄る柚希。
「なんなんだ…全くわからない……」
頭を抱える、大翔だった。
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