森守の令嬢はもふもふ大型獣人に執愛される
「ロスティの魔獣研究者が『魔獣の初恋』という論文を発表してからは、以前よりやりやすくなったらしい」

「なるほど」

 人が魔獣を忌み嫌っていることを、理性のある魔獣は理解している。

 だから、基本的には近づかないようにしているそうだ。

「だから、理性のある魔獣は安易に村へ行ったりしない。人を怯えさせてしまうからな。稀に恋する相手を探しに行ったりもするが、人にやられるほど弱くはない。エディが普段相手にしていた魔獣は理性のない魔獣で、見た目は同じ魔獣に見えるだろうが、そこには明確な差がある。だがまぁ、基本は同じだ。奴らも、一応は人に惹かれる性質を持っている。理性がない故に、恋を自覚する前に食べようとするのだが」

 そこで言葉を切ったロキースは、キッと鋭い視線を近くの枝の上へ向けた。

 つられるようにエディがそこを見上げれば、アーンと今にもエディへ齧り付こうとしている魔栗鼠(りす)の前歯がギランと光る。
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