誰がなんと言おうと砂
「そんなもん糞食らえですけどね」
さっき星田くんにおぶさられたとき 奈央の視線を感じたの
だからたぶんね 星田くんに気のある奈央のことだからきっと
教室に戻ったらまた机に花瓶が置かれてるんだ
それは前に奈央がすっとぼけてした たちのわるい嫌がらせ
今度はそれじゃ済まないかもしれない
上履きに画鋲の痕がある
それは踵を刺したわたしより ひどく鋭利な形をしているよ
大切なものほど取り零してしまうし人は、
「いまが一番つらいです」
「…」
「長い目で見たら、今なんか一瞬だ。俺は、始まったばっかなんで、正直ちょっと毎日反吐が出そうだけど」
「…」
「見つけた以上は、責任取るんで」
蹲って見つめる保健室の床。それは気分が悪いでしょうと星田くんはわたしの手を掴んで保健室の外に連れ出してくれました。
一階の教室の外から見える青空と光がまぶしくて
春のはじまりはゆううつだ
「星田くん」
「はい」
「星田くんにはあの光が何に見える?」
幼稚園のとき、信号機の色に迷った日
自分の見ているものがなんだか人と違うことを知りました
あの日わたしが掴んだものは
水でも土でもましてや星なんかでも到底ない
「誰がなんと言おうと砂」