溺愛砂漠 ~デザートローズ~
「今でも子供同士はみんな兄妹のつもりだし、同い年の“ちはる”はやっぱり仲が良いかな。父さんもちはるは特別に可愛がるよ、息子の僕より」

しょうがないって肩を竦め気味に。

「どうして特別かって言うとね、ちはるだけ本当の父親がいないから。今の父親は二人目で、実の父親は彼女がお腹にできたばっかりで殺されたんだ。瑠衣(るい)さん・・・ちはるのお母さんは、結婚してたった三ヶ月で夫を殺された。犯人は水上興業の元下っ端で逆恨みだったらしいけどね」

美樹は、唐突な家族の話をそれでも真剣な表情で聞き入ってる。

「殺されたのは父さんの弟みたいな人で、僕も写真でしか見たことないけど男前ですごく格好いい人だよ。父さんは未だに後悔を引き摺ってる、一人にしなければ死なせずに済んだ・・・って。十年経っても二十年経っても父さん達の傷は塞がらない。生まれる前からちはるに空いた穴は埋まらない、あの人が帰ってこない限り。でも二度と帰ってこない。人が死ぬのはすごく理不尽だって僕は思うよ」

薄く笑んで美樹の髪に滑らせる指先。
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