平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
そして、リズを助けたことによって、当時助けに行けなかった心残りが解消されたのだ。

戦意を喪失した亡霊は、今や大型級の一頭の白獣にしか見えなかった。

黒い霧のようなモノを薄らとまとう身体は、改めて目にするとカルロよりやや大きいことが分かった。

けれど彼は、とても思慮深く利口な気質も窺えた。人が憎いと言いながらも、ここにいるどの白獣よりその瞳は感情を映した。

元は、とても優しく気高い白獣だったのだろう。

カルロが、戦士、と呼んでいたくらいに。

「――お前が、どのことを言っているのか、今の伯爵である俺には分からない」

ジェドが真摯な声で切り出した。

それは正直な告白だった。けれどリズは、今の亡霊にはとてもつらい対応のように思えた。

「団長様……」

つい、止めようと言葉を言いかけた時、ハッと口をつぐんだ。

再び亡霊の目を見据えたジェドの青い瞳には、一切の迷いもない、誰もが見惚れるあの強い輝きが宿っていた。

「けれど約束しよう、古き時代を生きた白獣よ。俺は白獣のため、守りたい者たちのための領主でいよう。そして、見初めた者のためならばどんな運命の荒波が来ようとも全力で立ち向かう。俺は、決して手を離さない」

団長様が、初めて好きになった人……。

自分に言われたわけでもないのに、リズはドキドキしてしまった。

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