平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
そういえば先日の言葉の意味を、きちんと尋ねられていない。もしかして本気で婚約者にと望んでくれているの?

《伯爵、感謝する。それを聞いて魂は軽くなった》

亡霊がゆっくりと頭を下げたのに気付いて、ハッとする。

亡霊の輪郭が、黒い霧と重なってゆらゆらと揺れている。この世から今にも離れようとしているかのようだった。

「もう、逝けそうなのか」

《そうなのかもしれない。以前終わった時と違って、瞼が重いのだ》

ジェドが問いかけると、亡霊が答えた。深々と頭を下げる。

《我は数百年もの間、土地と同族を守護し続けた古き白獣。もし、生まれ変わることがあるのなら……願わくば、もう一度、グレインベルトの地の一頭として戻りたいと思う》

白獣として生まれたことを怨んでいた亡霊の、切望。

死んだ白獣は、また白獣として生まれてくるのだろうか。それなら、白獣の女王ならなんとかできるのではないだろうか?

魂が無事故郷へと帰って欲しい。リズは、そんな願いを胸に目を向けた。するとカルロが浅く頷いてきた。

――全ての白獣の魂は、女王のもとへ帰る。そして、望めば生まれ変わる。

そう、カルロが眼差しで応えてくれている気がした。

不思議だ。リズに、動物の言葉など分かるはずがないから。

《そこ子供よ、悪かったな》

「ぅえっ?」

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