Mr.キラーの殺人
__遡る事、3年前。


親を亡くしたばかりの私は、


キラーへの殺意に溢れていた。


葬式では一切涙を流さないし、


遺品の整理の時も黙々と一人でやっていた。


その内親戚の人も私を気味悪がる。


それはそうだろう。


自分以外の身近な家族が死んだと言うのに、


表情ひとつ変えないのだ。


正直その時は誰とも関わりたくなかった。


養護施設に預けられる前、


つん、とあの匂いがしたのだ。


それを追いかけて死体を見つけた。


それが地獄の人生を導くものだった。


養護施設の人も、付き添いできた親戚も、


送りに来た警察官も、私を気味悪がった。


ただ一人、彼を除いて。


天谷さんは死体を見つけた私を


気味悪がらなかった。


逆に褒めてくれたのだ。


そしてその後、私に声をかける。


「…私の所へ来ないか?」


私の手を優しく握って。


後から来た気味悪がった親戚に


思いっきり喝を入れた。


「私は貴方達の様に彼女を否定しない、


見た目でしか判断しない貴方達とは違う」


私を引き寄せながら強い口調で言った。


「彼女の全てを受け入れて私が育てる、


辛いことも全て私が受け入れる!


これで育児権は私でも構わないだろう!」


天谷さんがあんなに話している所を


私はあの場で初めて見た。


顔を顰めて、強く言って、すごい怒っていた。


でも、課に連れて行かれた後は


ぎゅって私を強く抱きしめて


「君の事は私が守る、なんでも言いなさい、


できる限りのことはしてあげられる」


と、言ってくれた。


顔は無表情だったけど、それが天谷さんなりの


優しさなのかな、と思う。


その後は丁寧に課の皆さんを紹介して


天谷さんは仕事に戻って行った。


ぶっきらぼうだけど、彼は優しい人だ。
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