溺愛プロデュース〜年下彼の誘惑〜

『明日からまた宜しく』なんて挨拶を交わし
彼は部屋のドアを開けると―――

「然…？」

なんてタイミングの悪さなのか
聞き覚えるある声が私にまで聞こえてきた。
その人物こそが…

「美南…
　なんでお前がここに…」

噂の張本人だったとは。


せ、セーフ…。
玄関で見送った私の存在は
たぶん彼女には気付かれていない。

こんなところを見られたら
また何を言われるかわかったものじゃないから。

「《《そっち》》の部屋にいたんだね、然」

「最近この部屋を人に貸したから。
　その挨拶に来てたんだ」

閉められたドアの先から
微かに聞こえる2人のやり取り。
聞き耳を立てるなんて悪趣味だけど
やっぱり気になってしまいドアの前まで近付いてしまう。

様子を見てもいないのに妙な緊張感が走る…

「貸してるって…珍しいね。
　ずっと誰にも貸さなかったのに」

「そうだね。
　今まではそういう人に出会わなかったし」

「その相手って…
　綺咲さんだったりして。」

美南さんの口から私の名前が出てきて
ドキッと心臓が跳ねる。