溺愛プロデュース〜年下彼の誘惑〜

驚いた様子の美南さんの声が聞こえてくる。

私も私でビックリしてしまい
その拍子でドアに足が当たってしまった。

ドンって音がしちゃったけど…
気付かれたかな?
だってそんなハッキリ言うなんて思わなかったし…

前にも言われた事があったけど
あの時と違って今回のは
ドキドキするような甘いもの。

”好きだよ”なんて
うわぁ…
急に恥ずかしくなっちゃったよ。

「好きって…どういう事よ、然」

感情を抑えているように喋る美南さんの声。
そこには明かな怒りが籠っていて
嵐の前の静けさを感じさせる。

「言ったままの意味。
 今度は大切にしたいと思ってるから。
 だから悪いけど、美南さぁ…
 いいかげん俺を手放して?」

然さんの言葉に、声に
顔なんて見ていないのに
ゾクっと背中に冷たいものを感じた。

こんな言い方をする彼を初めて、聞いた…
”冷酷”な部分、みたいな。

「…ッ」

鼻を啜るような声を共に
またあのヒールの音が鳴り響いて
音が遠ざかっていく。

今、彼女は泣いてる…

「ごめんね、由凪さん。
 嫌な部分…聞かせた」

扉越しに彼は呟き
隣の部屋へと入っていってしまった――



                   【行く末は前途多難 終】
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