溺愛プロデュース〜年下彼の誘惑〜

気怠い体を起こし
画面に向かって言葉を交わす。

「今、開けます」

玄関のロックを解除しドアを開けると
どことなく元気のない然さんがいる。

「体は平気?」

心配し気遣ってくれる彼は
本当にいつも優しい言い方をする。

「うん…大丈夫。
 然さんこそ、火傷とかしてない?
 モデルさんなのに
 私のせいで何かあったら申し訳が――」

「大丈夫だから、それ以上は自分を責めないで」

また言い終わる前に言葉を遮られしまった。

「由凪さんは他人の事ばかり。
 もっと自分を大切にしな?
 俺は本当、それが1番心配」

「然さん…」

「火事の原因は
 美南が消し忘れたヘアアイロンからの発火。
 アイツの不注意だったんだ」

「…そう」

消し忘れ…
きっと普段じゃ気を付けていたと思う。

だけど好きな人からの一言に気を取られて
見落としてしまったのかもしれない。

「言葉の力って、大きいね…」

「由凪さん?」

美南さんは然さんの言葉に
私は美南さんの言葉に
それぞれが違った意味で心を動かされる事を
知った―――





            【火炎に映る涙。終】

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