待ち人、音信なし
エレベーターに乗り込み、5階で降りる。
入口でタイムカードを切る。
受付のトリーが雨の月曜の朝すら吹き飛ばすような笑顔で挨拶をしてくれた。
「おはようございます。今日も良いお仕事を」
ノアさんが車のキーを持ったのを見て、私も立ち上がる。仕事道具の入った鞄を持とうと手を伸ばせば、先にノアさんが持ち去った。
空に残った私の手が可哀想に思える。けれど取ってくれる人もいないので、引っ込める。